【必読】全子供が読むべき珠玉の父子物語。『とんび』を読んで思うこと。
こんにちは!
オオタユウスケ(@mellegarden)です!
今回は重松清さんの著書『とんび』の書評です。
数年前にドラマ化したことでも知られる、父子の感動大作について書かせていただきました。
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舞台は昭和。胸が熱くなる、珠玉の感動ストーリー。
それまで幸せいっぱいだった家庭に悲劇が襲います。
当時まだ物心がつく前だったアキラに対して父親ヤスがどんな思いで子育てすることを決意したのか...
昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。 (Amanzon 『とんび』内容紹介より)
このあらすじを読むだけで、目頭が熱くなってきます。
その結果、僕は父親に対する過去の言動に後悔を覚えるのです...
そして家に帰ったら少しでいいから父親を想った行動をしようと決意するのです。
「寂しい」は「寒しい」
これは父親のヤスさんが親しい和尚様にアキラのために再婚すべきかどうか相談をした時に、和尚様が発した言葉です。
「アキラ、おまえはお母ちゃんがおらん。ほいでも、背中が寒うてかなわんときは、こげんして、みんなで温めてやる。おまえが風邪をひかんように、みんなで、背中を温めちゃる。ずうっと、ずうっと、そうしちゃるよ。ええか、『さびしい』いう言葉はじゃの、『寒しい』から来た言葉じゃ。『さむしい』が『さびしい』が『さびしい』『さみしい』に変わっていったんじゃ。じゃけん、背中が寒うないおまえは、さびしゅうない。のう、おまえにはお母ちゃんがおらん代わりに、背中を温めてくれる者がぎょうさんおるんじゃ、それを忘れるなや、のう、アキラ……」
このシーンは雪が激しく降る冬の夜に海に、和尚様が連れてきたところです。
この言葉に僕は鳥肌が立ちました。
それまでにアキラは母親がいないことからちょっとした問題行動を起こしていました。
しかしこの言葉からヤスさんに「お前1人じゃないんだ」と、訴えてることがわかります。
言葉というのはつくづく不思議です。
「寒しい」から変化したものが「寂しい」であり、その状況を考えればすべきこともわかってきますよね。
舞台が昭和であり、単純な比較はできません。
ただ、現代には、みんなで”暖かくしてやる”ということを血の繋がりがあってもできない家族がたくさんいるのではないでしょうか。
古き良きを継承すべき理由はこういうところにもあると感じます。
正解なんて結局、正解だと信じたもん勝ちって話。
この言葉は、ヤスさんがアキラに対して、それとヤスさんが姉のように慕う、たえこさんが捨ててしまった子供に対してそれぞれ想うことを隠している場面で使われました。
秘すれば、花
1つの章のタイトルにもなっていることの言葉。
一見、素敵な印象を持ちますよね。
でもそこに至るまでの過程や強すぎるほどの思いがあって初めて使える、それほど安易に使ってはいけないものだと思いました。
ヤスさんもたえこさんもそれぞれの子供に対して隠していることを最終的にはベターな形で終結させるわけです。
今まで打ちあけようとしたものの、それこそ隠しているからこそ穏やかで幸せな今があると想うと胸が熱くなりました。
ただ、人間生きていれば、学校の数学のように正解が絶対にぶれない正解であることは少ない、ということが浅い経験値ながらも理解できるようになってきました。
それを考えると、墓場まで持っていく、というような表現があるように、それが正解とするのは結局のところ、その人自身であり、その後どんな行動や意志を持てるのかによるんでしょうね。
僕にもいつか秘すれば、花という言葉を使う日が来るのでしょうか...
理想は海のように大きな器を持つこと
ヤスさんがアキラとそのお嫁さんである、由美さんに対して言った言葉です。
一つだけ言うとく。健介のことも、生まれてくる赤ん坊のことも、幸せにしてやるやら思わんでええど。親はそげん偉うない。ちいとばかり早う生まれて、ちいとばかり背負うものが多い、それだけの違いじゃ。子育てで間違えたことはなんぼでもある。悔やんどることを言いだしたらきりがない。ほいでも、アキラはようまっすぐ育ってくれた。おまえが、自分の力で、まっすぐに育ったんじゃ
特に印象深いのは、「親はそげん偉うない。ちいとばかり早う生まれて、ちいとばかり背負うものが多い、それだけの違いじゃ。」というところです。
以前歌舞伎役者の方がお子さんたちからプレゼントを受け取ってその直後に同じようなことを口にしていました。
その時も強く感銘を受けたのを覚えています。
完璧な人間なんていなくて、それは親であっても例外ではないと思うんです。
もちろん幼い時は絶対的な存在で、それはもう正しくないわけがないというか正解でしかないわけですが。笑
いつか自分が親になったときも子供と一緒に自分も成長している、ということを心に留めて子育てしたいと思いました。
そしてヤスさんはアキラと由美さんに上で引用した言葉を送った後に、ある言葉を思い出しました。
それはいつの日か親しかった和尚様に言われた言葉でした。
子どもの悲しさを呑み込み、子どもの寂しさを呑み込む、海になれ。
上で引用した言葉を送ってはいますが、1つだけ親は子供にしてあげなくてはいけないことがあると言います。
それが子供を寂しくさせるな、ということです。
海になれとは深い言葉ですよね。
僕はこれは子供に対してだけではなく、理想の大人とはこうあるべきかもしれないと感じています。
子供に対して、家族に対して、友人や同僚に対して、社会に対して海のように大きな器を持ちたいと思いました。
親子関係について考える際に絶対読むべき父子のお話です。
どうでしたでしょうか。
『とんび』について書かせていただきました。
偶然手に取った場合でも、このブログやネットの書評を読んででもいいです。
親子関係について何か思うことがある方でもない方でも、この作品は絶対に読むべき作品だと思います。
偶然にも昨日は父の日だったので、父にプレゼントを渡しました。
最近よく飲んでいるのでワインをセレクト。
照れていてありがとうとは言われたもののどれだけ喜ばれているのかはわかりませんが、少しづつ親孝行も考えていこうと思います。
時間は有限ですしね。
少しでも読んでくださった方に何か考えるきっかけを差し上げられたらとてもうれしく思います。
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